いかがなさいましたか?
●慢性の咳 ●甲状腺

○甲状腺○

「最近、喉のあたりが腫れているのではないかと知人に指摘されました。甲状腺の病気ではないかと心配しているのですが。」
甲状腺は蝶が羽を広げたようなかっこうで喉ぼとけの両側に存在し、両方の羽のような甲状腺が喉ぼとけの下でつながった状態になっています。
唾を飲み込む時に甲状腺が上方に動くために、喉ぼとけの両側に手を当てておき唾を飲むと、腫れた甲状腺をより的確に触れることができます。
甲状腺が腫れているという時には、甲状腺全体が腫れる場合と、甲状腺の一部がしこり(結節)として腫れる場合の二つがあります。
甲状腺全体が腫れる場合をびまん性甲状腺腫、甲状腺の一部がしこり(結節)として腫れる場合を結節性甲状腺腫と呼んでいます。
びまん性甲状腺腫をきたす病気に、慢性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症(バセドウ病、腺腫様甲状腺腫などがあります。
結節性甲状腺腫をきたす病気に、甲状腺の良性および悪性腫瘍、甲状腺のう胞、腺腫様甲状腺腫などがあります。

「甲状腺の働きを教えてください。」
甲状腺は、甲状腺からでる甲状腺ホルモンによって、全身の代謝を調節しています。ヒトの体を自動車に例えると、ヒトが摂る食事はガソリンに、そして甲状腺ホルモンはガソリンを燃焼させるエンジンに相当します。甲状腺ホルモンは食事から摂った栄養分をうまく燃焼させてエネルギーとして全身の臓器に供給しているのです。
したがって、ヒトの体は甲状腺の働きによって栄養を燃焼させた結果として肌はみずみずしく潤い、体温を維持できることになります。また甲状腺ホルモンを介したエネルギー供給によって記憶をつかさどる脳が清明に働き、心臓が正常に動くことで全身に血液を供給でき、腸の動きを調節することで栄養分の吸収を行うとともに便秘を解消しているのです。それ以外にも甲状腺ホルモンは、女性の生理とも関連しています。

「甲状腺ホルモンが出すぎると、どんな症状がでますか。」
前述の甲状腺の働きから想像できるように、甲状腺ホルモンが出すぎると、全身のエネルギー産生が過剰となるため、安静時においても全力疾走しているかのような代謝状態となります。つまり、肌は発汗過多となり湿潤し、微熱をもつようになり、手足が振るえるようになり、心臓の拍動が増えるために胸がドキドキするようになります。過剰なエネルギーの産生は、体を疲れやすくし、だるさをもたらします。また、出すぎた甲状腺ホルモンは、脳を過剰に刺激するためイライラ感を惹起し、腸への過剰な刺激により軟便や下痢を来たすようになります。
また長期的に甲状腺ホルモンが出すぎる状態が続くと、体に蓄えられた栄養分を燃焼しすぎるために体重が減少してきてヤセてきます。
さらに、女性では生理の量が減ったり、持続が短くなったり、ひどくなると生理がなくなることもあります。
甲状腺ホルモンが出すぎた状態を甲状腺中毒症といっています。
甲状腺中毒症をきたす病気には、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、プランマー病、破壊性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎などがあります。

「甲状腺ホルモンが足りないと、どんな症状がでますか。」
甲状腺ホルモンが足りない時の症状は、前述の甲状腺ホルモンが出すぎた場合とは全く逆の症状といえます。
すなわち、体に必要なエネルギー産生ができないために、代謝や活動性が低下した状態となります。肌は発汗を欠いてガサガサと乾燥し、冷たくなります。心臓の拍動が減少するためにゆっくりした脈(徐脈)となり、脳の活動性の低下からいつも眠ったような状態や物忘れがみられます。高齢になってから甲状腺ホルモンが低下しやすいために、この病気を認知症と誤って放置されやすい傾向にもあります。甲状腺の働きも急に低下すれば症状の把握が比較的簡単なのですが、徐徐に低下するために注意が必要です。
さらに甲状腺ホルモンの低下は、腸の働きを弱めて便秘をきたします。また、摂取した栄養分をエネルギーとして燃焼できないために、体に栄養分が蓄積して体重増加をきたします。
甲状腺ホルモンが低下した患者さんでは、一般的な血液検査で異常を認めることがしばしばあり、貧血や肝機能異常や高コレステロール血症と診断されることがあるため、このような異常を指摘された場合には、甲状腺ホルモンが低下した可能性も念頭に置く必要があります。
女性では、生理の量が多くなることがあります。
甲状腺ホルモンが足りない病気を甲状腺機能低下症といい、大半は慢性甲状腺炎(橋本病)によるものです。
慢性甲状腺炎(橋本病)は、採血によって甲状腺に対する自己抗体であるサイロイドテストおよびマイクロゾームテストが陽性であることから診断します。